--『かいじゅうたちのいるところ』に続いて、スパイク・ジョーンズ監督との2回目の仕事となった『I'm Here』では、ロボットのデザインを担当されましたが、何か苦労した点や制作秘話などはありますか?
ロボットを作る方がよっぽど簡単だったよ。4年以上も続いた『かいじゅうたちのいるところ』の仕事は、特殊効果の専門学校に通っているみたいだった。どちらも、人間とは異なる感情を持つ何者かを作るわけだから、同じ難問に行き着くんだ。特殊なデザインの目に、どれだけ金属のフードをつけるとまぶたが悲しさや嬉しさを表現できるか、なんてことで長いミーティングをくり返した。難しく考えないで、時間をかけて良い解決策を探そうと思えば、問題はない。
--『I'm Here』のプロジェクトを通じて新たな発見はありましたか?
新しい人との出会い。常にこれが一番だ。
--『I'm Here』でソニーさんがお気に入りのシーンと、この映画への感想を教えて下さい。
僕の一番好きなシーンは、駐車場のシーンかな。フランチェスカがシェルダンのために音楽をかけるところ。ふたりのやり取りがとても生き生きと仕上がっているからね。ふたりがベッドにいるシーンも好きだ。アニメーションも演技も狙いどおりだよ。
--イラストを描くようになったのはいつ頃からですか?
思い出せない。よくあることで、子供の頃には5本足のライオンを描いた。だけど、もっと大きな種がまかれたんだ。ある日、兄が自分のスケートボードに絵を描いていた。きっと、どこかで見た「ドッグタウン」ブランドのグラフィックを削り出しのスケートボードに引き写してたんだけど。僕はそれを、まるでトランス状態みたいになって見ていたよ。父さんは父さんで、伝統的なホットロッドのカスタムカーに描かれている炎の描き方を教えてくれた。あれもその後、いいように使われまくって、いまではブルートゥースのイアーピースとかでもホットロッド風の炎を見かけるけど、そんなになるずっと前にね。
--インスピレーションの源はどこから?
解剖学的な絵とか、紙幣のために描かれた図版のような、何世紀も前のエッチングの数々。びっくりさせられるね。ミロ・マナーラ(イタリアの漫画家)もすごい。今より若い頃、エゴン・シーレの作品を何時間も見つめていたこともあった。それから、フランク・フラゼッタ(アメリカのイラストレーター)。『Frazetta: Paining With Fire』というドキュメンタリーを見て。
--好きな漫画家やイラストレーターはいますか?
どれっていうのはないけど、漫画ってすごくヤバいやつはすごいところまでヤバさを表現してるでしょ? そういうのが僕は好きだね。
--今取り組んでいるプロジェクトや、今後挑戦したいことはありますか?
でっかいチャレンジがしたい。映画が大好きで、たくさん観るようにしている。ひどい映画がたくさんあって、観ると頭がおかしくなる。映画を撮りたくてたまらない。
--展覧会やDVD付きブックで、これから作品を鑑賞する人々にメッセージをお願いします。
僕が真実心底からこの作品を支えるのはなぜかというと、スパイク・ジョーンズが自分自身の考えに対する妥協を決してせず、その一点において、彼と働く僕自身への自負の念が芽吹いたからだ。もし、みんながこの作品を楽しんでくれたら嬉しいし、きっと正しく伝わったのだと思う。
僕は、地震がもたらした被害と損失の報にはとてもショックを受けている。僕が日本に行ったときにひとつ感じたことは、前向きな姿勢と一体感。生産性の水準は、驚くべきものだった。その卓越した力をもってすれば、日本の人々が急速に立ち直るだろうと僕は信じている。
--スパイクと仕事をしていかがでしたか?
素晴らしかったわ。自分が関わるシーンを撮る日は特にね。彼はものすごいアイディアの持ち主だし、ディティールへのこだわりも尊敬に値する。面白い人よ。だから一緒に仕事するのが楽しい。私に「よーい、スタート!」っていう撮影開始の掛け声をやらせてくれたのよ。あれはすごく嬉しかったな。
--『I'm Here』で非常に印象的な可愛らしいネズミの造形を制作担当されましたが、ネズミを選んだ理由が何かあったのですか?
ネズミにしたのはスパイクのアイディア。私が想像するに、きっとネズミが人間みたいな環境で暮らしているからじゃないかしら。ロボットのフランチェスカが、彼女の周りのネズミとかゴミの中で見つけた紙切れをどんなふうに見てファンタジーを紡ぎ出したか、私にはよくわかるの。
--制作にまつわる苦労話はありますか?
それはもう…。なによりもまず時間的な制約があった。すべてを成し遂げるのにたった4日間しかないのに、私はまったく土地勘のない町にいたんだから。必要なものを揃えるにも、いろんな人にすがるしかなかった。制作開始から2日たって、ベッドに寝ているネズミの頭が逆向きだってことになってやり直し。ネズミの頭をもぎとったわ。あの日は、ほとんど泣きそうだった。
--『I'm Here』のプロジェクトを通じて新たな発見はありましたか?
映画制作の現場…、特に『I'm Here』のチームとの仕事が、自分は本当に好きだっていうことが発見ね。またスパイクと仕事ができることを、心から望んでいるわ。
--『I'm Here』でメリルさんがお気に入りのシーンと、この映画への感想を教えて下さい。
一番好きなのはネズミのシーン。もちろん自分が作ったネズミへの身びいきが働いているけど、やっぱり一番はね。このフィルムは丸ごと大好き。もう何度も観てるわ。参加できてラッキーだったと思ってる。
--動物をモチーフにしたユニークで印象的な作品をいろいろ作られていますが、動物にこだわる理由は何かありますか?
私と動物のあいだには、どんなときも強くて特別な結びつきがある。小さい子供の頃からずっと、動物に惹き付けられていたわ。それともうひとつアート制作も、生きて行くなかで自分が自然と惹き寄せられたことだった。だから私にとって、動物への執着がアートと交わることには意味があるとしか言えないわ。ふたつとも自分という人間の本質的な要素なのよ。
--インスピレーションの源はどこから?
それは動物よね。他の答えを探すのは難しい…。インスピレーションなら、いろんなところで受けるけど。何かに目を留めたり、何かを発見したり…。そういうものが、何らかの形で自分を動かすという…。
--今取り組んでいるプロジェクトや、今後挑戦したいことはありますか?
たった今は、自分自身の作品制作に集中しているわ。
--展覧会やDVD付きブックで、これから作品を鑑賞する人々にメッセージをお願いします。
楽しんでね! ティッシュを握っていた方がいいかもしれないわね…。それと、どんなときでも動物には優しくしてね!
--『I'm Here』の主題歌に起用された曲「There are Many of Us」はどのようにして生まれたのですか?
初めての失恋を体験した後、親友にも別の町に引越しすると告げられた午後、お風呂に入って一人泣きつつ曲を書きました。
--楽曲制作において、スパイク・ジョーンズ監督とお話しながら作られたのですが?
曲はスパイクから映画の話をもらう以前に書いていました。この曲は私がギターで初めて書いた曲で、ソロで音楽活動を始めることに自信がなかった私を励まし、サポートしてくれた彼に対するお礼の気持ちから送ったところ、2週間ほど経った頃に彼から連絡があって映画のことを聞きました。
--『I'm Here』の撮影現場の雰囲気はどうでしたか?
映画の撮影現場は初めて体験しました。照明の光がとても非現実的かつ独創的な雰囲気を創っていて、現場には友達や知人も何人かいたのですが、まるで彼らに月の上で再会した感覚でした。
--リスナーに、「There are Many of Us」をどんな気持ちで聴いてもらいたいですか?
リスナーが感じるものを自由に感じてほしいです。そしてこの曲がその感情を支える存在として役立てばとても素敵だと思います。
--『I'm Here』の好きなシーンや感想を教えて下さい。
スパイクの作品の多くは、私たちが自分でも表現できない感情を引き出したり、予想以上のサプライズが待っていたりするからとても好きです。
恋愛/感情が理屈ではなく、自分が誰かによってインスパイアされ、影響されることで、時にはとてもロマンチックで、時には辛い結果を生み出すことは、私たちがみんな体験することなので、みんなどこかで共感できるはずだと思います。
--ソロ・デビューEP『ASKA』について聞かせてください。
5曲入りのEP はソロアーティストとして初めて作った作品で、まだ明確に自分が音楽を通して表現したいこと、伝えたいことなど分からないまま作曲したので、とりあえずその時に体験していたことをそのまま表現してみました。今年の夏?秋にリリースする予定のアルバムではやっと自分の音に出会えたという感触があり、もっと自分に近いものができたと思います!
--ニック・ジナー (ヤー・ヤー・ヤーズ) 、フリー (レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)など、数々の大物アーティストとコラボレーションされていますが、実際一緒に制作していかがでしたか?
ニックもフリーも友達なので、制作はとても自然なプロセスで楽しかったです。
--アスカさんの最近の活動状況も教えてください。
アルバムの収録を終えて、他の短編映画やコマーシャルの作曲、また新しいアートプロジェクトに取りかかっています。4月にはヤー・ヤー・ヤーズのニックとボアダムズのブッチー・フエゴとコラボしたアンビエント音楽のアルバムもリリースする予定です。ちょこちょことブログなどアップしているので是非ウェブサイト(www.askamusic.com)も覗いてみてください。
--最後に読者にメッセージをお願いします。
magic is magic.