--自己紹介をお願いします。
私はフィンランド出身のビジュアル・アーティスト、ヴィレ・アンデションです。私はペインティング、ドローイング、写真と様々な技法を用いて作品制作をしています。とはいえ、自分を制限したくないので常に色々なことに目を向け、新しい表現にチャレンジしています。例えば、この冬にフィンランドで開かれた舞台のセット・デザインやコスチュームの制作は、私にとって新しい試みでした。
--本展のコンセプトや見どころを教えてください。
私は一年おきに新しいシリーズの作品を制作することを心がけていて、その度に全く新しい技法を取り入れています。ディーゼル・アート・ギャラリーで開催している本展は、それぞれ異なる年やシリーズである作品のコレクションです。言わば、世界へ向けた“自己紹介”(An introduction) のような展覧会です。
--黒・白・グレーで描かれた作品が中心ですが、そのスタイルはどのようにして生まれましたか?
作品を構成する上で無駄なものを排除し、必要不可欠な要素だけを取り入れるように心掛けています。私は作品に“静寂”を多く扱います。私にとって、ささやきは時に叫び声より力強く響くのです。また、モノクロームの表現は、私にとって平凡さを超越する方法のひとつなのです。
--フィンランドのアート・シーンについてお聞かせください。
私が住むフィンランドの首都、ヘルシンキのアート・シーンはとても影響力があり多様性に富んでいます。小さな街だとしても、そこでは常にたくさんのことが起こり、アーティストの多くはそれぞれとてもユニークなヴィジュアル・ランゲージを持っています。サプライズが好きで、毎日新しいことを発見したい私にとって、この街のアート・ギャラリーはパーフェクトなのです。
--作品ができるまでの過程を教えてください。また、作品制作において、重要していることはありますか?
私の制作過程は大まかに3つのステップに分かれています。1つ目は、自分の頭の中にあるイマジネーションとクリエイティビティを自由にフローさせ、作品上で扱いたいアイディアとテーマを次第に選びます。言い換えれば、私は作品の構成概念を考えることから始めます。二つ目はどこで撮影するか、どの道具が必要か、どこから予算を集められるかという実践的な問題と向き合います。三つ目は実行あるのみです!
私の写真の被写体はいつも実在しているものです。例えば、ダンサーと作品制作する時、私はダンサーの全身を真っ白に塗り、スタジオのセット・デザインをひとつひとつ組み立てます。被写体である俳優やダンサーを除き、ほとんどの作業を一人で行っています。
--“Young Artist of the year 2015”を最年少で受賞されアーティストとして高い評価を得られていますが、どのようにしてアートに興味を持ちましたか?またアーティストになろうと思ったきっかけは何ですか?
私は片田舎のとても小さい村の生まれで、何かすることを見つけるためには、自分のイマジネーションとクリエイティビティを生かさなければなりませんでした。私の母は美術の教師で、アートに関する本をよく家に持ち帰っていました。今でも美術館に行く度、幼い時に記憶した数々の作品を思い出します。本を見ながら、その作品の世界を自分が巡り歩く姿を想像するのが好きでした。のちに、将来アート・コレクターになりたいと思い始めましたが、年を重ねるうちに、自分が美術を勉強して自分のコレクションを作ればいいのだと気付きました。それは今でも続けていることです。
--これまで手掛けた作品の中で、最も気に入っている作品を教えて下さい。
それはとても難しい質問ですね。たぶん、それぞれの作品に思い入れがあるからだと思います。選ぶとすれば、最新のシリーズですが、毎回新しいシリーズを制作するたびに、自然とそれがお気に入りになる傾向があります。
--作品のアイディアはどのような時に浮かびますか?インスピレーションの源を教えてください。
基本的に身の回りのもの全てがインスピレーションの源です。ビジュアル・アートだけに重きを置くのではなく、例えばファッション、映画、文学、舞台演劇、デザインやダンスにも関心があります。自分自身の感情もインスピレーションの源になっているので、私の作品は外的刺激と内側からの感情が一体となってできています。
--作品を通して人々に伝えたいメッセージなどありますか?
私的な感情をどう公的に伝えることができるかをしばしばタスクに掲げて制作しています。自分の感情を表現の手段として使うのであれば、観る人から共感を得られるように完成させなければなりません。オープンでニュアンスがあり、観る人をリスペクトした作品に仕上げるため、これまで培ってきた自分の感情を正確に伝える表現形式を使うことを試みています。
--影響を受けたアーティストや映画・音楽など教えてください。
たくさんあります!私は様々なカルチャーに興味があります。今回、日本で展覧会を開くということで、特に好きな日本のアーティストをほんの一例として挙げるとするならば、坂本龍一、大野一雄、安藤忠雄、小津安二郎、原研哉です。日本は刺激的なものに溢れていて、ファッションやビジュアル・アートからも影響されています。現代的な文化の他に、俳句、歌舞伎、能、墨絵、生花などのより伝統的な文化に魅了されています。日本美学の簡素、不均整、渋い、渋み、自然、幽玄、脱俗、静寂などのコンセプトはとても興味深いです。
--尊敬するアーティスト/人物を教えてください。
私がこれまでで最も尊敬するアーティストの一人が、ロバート・ウィルソンです。彼は舞台監督として広く知られる人物ですが、ビジュアル・アーティストとしても活動しています。音楽でいうと、フィリップ・グラスとデヴィド・ボウイ。彼らは共通して、自己改革することを恐れず、常に新しいことに興味を持っていて、その姿勢を見習いたいと思っています。最近ではイングマール・ベルイマン監督の映画をよく観ていて、人間の内在的、実在的な問いをうまく捉えているところに惹かれます。
--オフはどのように過ごされていますか?
オフの日は散歩に出掛けることが好きです。特に、はじめての地で自由時間があれば、可能な限りたくさんの公園を訪れようと試みています。東京滞在中も六義園、浜離宮、後楽園、谷中霊園、代々木公園、新宿御苑などに行きました。所々、花が咲いている木を見ることが出来たのが嬉しかったです。
--初めての日本滞在はいかがでしたか?日本について感じたこと、影響を受けたことなどありますか?
私は何年もの間、日本に興味を持っていました。今回の訪問は私の期待を遥かに上回り、訪れた全ての場所を好きになりました。その事について話したい事はたくさんありますが、ほんの一例を挙げるとすれば、日本でできた新しい友人が漫画とアニメの聖地、中野ブロード・ウェイを紹介してくれました。そこで見たものは、私にとって大きな新しい表現の世界でした。近いうちに、また日本に必ず訪れたいと思います。今回の日本への初訪問で得た経験は、次のシリーズを制作する上で、インスピレーションの源になることを確信しています。
--現在取り組んでいるプロジェクトや今後挑戦したいことはありますか?
現在は二つの個展の準備をしていて、それぞれスウェーデンの首都、ストックホルムで開催されるものです。北欧現代美術を牽引するマーケット・アート・フェアでは全く新しい作品を展示する予定です。アート・フェア開催月の5月はストックホルムに滞在します。また新たなシリーズやプロジェクトも考えていて、制作を始めるのが楽しみです。
--これから作品を鑑賞する人々に向けてメッセージをお願いします。
既にたくさんの方がギャラリーを訪れてくれたと聞いてとても嬉しく思います。みなさんありがとう!多くの方から作品に関しての感想メールを受け取り、楽しく読ませてもらいました。メールを送ってくれた方々もありがとう!最近、インスタグラムのアカウントを作ったのでこちらも是非チェックしてください。https://www.instagram.com/villeand/